2015/03/26

それはまるで、映画のように

学校で、練習をしていた教室に
伴奏科の教師が
『練習をしたいのだけれど、30分使わせてもらえないか?』
と、入ってきました。


私は、充分に練習したのもあり、
休憩がてら、先生のピアノの音も聞いてみたいと思い、
先生にピアノをゆずり、


私は、静かな窓の外を眺めながら、
ボーっと椅子に座りました。


しばらくして、先生が
『フッ』という呼吸と共に、
難しそうな曲を弾き始めました。


私は、その音と共に、
自分の楽譜を開き、
ドイツ語をフランス語に訳す作業を始めました。



今、

どこからのアングルで見ても、
とても美しい絵になると、


少しばかり、自分に酔いながら、
先生のピアノと、自分の楽譜に記されていく
鉛筆から流れるフランス語と


静かな窓の外に降る雨に、


黙劇のようなひと時を過ごしました。


30分もたたずして、先生は、
『用事がせまっているので、これで。』
と、どこかへ、行きました。


静かな間が、ふと解禁され、
また日常に戻っていくような感覚と共に
『さよなら』と言い、


私は、またピアノの前に座りました。


今のひと時は、本当に
美しいひと時だったな、と
人知れず、感動しながら。