もう10年以上前になる。
メゾの素晴らしい歌手が
こんなことを言っていた。
『皆様は、舞台に立つ、
あるいは、人前で歌う、
となりますと、水を得た魚のようです。
さぁ、何故、それを
練習時になさらないのですか?』
この話を聞いたのは
私が19歳の時であったと思う。
全くその通りであると同時に、
アーティストというのは、
つくづく、己との闘いであると思う。
そして、今私が思うのは、
本番以上の緊張感を
稽古時に創り出し、
その中で、集中することが
必要だということだ。
本番に向けての努力ではなく、
日々の努力の結果が本番なのだ。
稽古時に、本番以上の
集中力を創り出さねば、
自ら持っている力を
出し切ることができない。
さらに言えば、
本番では絶対に出来ないことも、
稽古時では出来るという点もある。
負荷をかけるのである。
水面下で何が起きているかは
見えないものだ。
最後に舞台袖に戻るとき、
満ち足りているかどうかは、
日々の洗練された稽古にある。
Sayuri ARAIDA HP